チチカカ湖の概況
ボリビアとペルーの国境に横たわるチチカカ湖は、琵琶湖の12倍の面積(8,562km2)と3,810mの高度を持つ。湖水面は両国でほぼ2分されている。水温は、11~17℃と年間を通してさほど変化がない。湖水は、海水の1/10程度の塩分を含有している。最高水深は280mを超える。
湖岸にはチチカカ湖固有種であるトトラと呼ばれるカヤツリグサ科の注水植物が繁茂している。この植物は、これで舟を作るほか、家畜の餌に使ったり、根元の部分は子供達のおやつになったり用途は広い。
湖内にはいくつか島がある中でも太陽の島にはインカ時代の遺跡があり、観光地となっている。また、その近くの湖底にも遺跡があるとのことである。
チチカカ湖の魚
チチカカ湖の在来種の一番大きなグループは、メダカ目のOrestia属である。この属はチチカカ湖だけでも約20種存在すると言われているが、交配種も多くその種類数には諸説ある。さらに、ナマズ目Trichomycterus属の2種が存在する。
外来種としては、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)とペヘレイ(Basilichthys bonariensis)があり、前者は1940年前半に、後者は1950年代半ばに移植された。
ボリヴィア国内の漁獲量は、1994年の国立水産局の統計によると5,970tで、その内チチカカ湖のあるラパス県からのものは2,606tである。その内訳は、ペヘレイ785t、イスピー(Orestia ispi)925t、カラチ(O. agassi, O. luteus等の総称)660t、ニジマス86t、その他150tとなっている。ボリヴィアでの魚類養殖は緒についたばかりであり、その中でもニジマスが最も多く生産されており、同統計によると年間517tである。
農漁村の生活
湖の周辺に住む人々は、アイマラ族と呼ばれる人達で、未だインカ時代の伝統的農法で、アンデス高地原産であるジャガイモ、トウモロコシなどを、主に自給のために栽培している。漁業は、動物タンパクの補給と僅かな現金収入を得るために細々と行われている。主な漁法は刺網である。以前は、トトラで作ったアシ舟で漁をしていたとのことである。幹線道路沿いでは、輸送業、商業、観光業などで現金収入を得ている人もいる。
チチカカ湖内に浮かぶ小島では、農耕地及び放牧地が少ないため、漁業に大部分を依存している村もある。そういう村では、観光用のトトラ舟や現在使われている木造の帆船などの造船が盛んである。
家屋はアドベ(Adobe)と呼ばれる日干しレンガで作られるのが一般的だが、最近は穴あき焼きレンガの赤い壁の家が目立つようになった。また、屋根も萱ぶきからトタンへと変わりつつある。
彼らアイマラ族は、アイマラ語を使うが、公用語であるスペイン語も話すバイリンガルである。ただ、高齢になるとアイマラ語しかしゃべらない人もいる。
電気は湖岸ではすでに普及しているようであるが、上水道はまだ普及してなく飲料水は、湖の水を直接利用しているところが多い。各家庭のトイレは、母屋から少し離れたところに、穴を掘りアドベで囲いを作る簡単なもので、一杯になると埋めて違うところに作り直す。
普段はおとなしい高地民族であるが、祭りにかける意気込みはすごい。ブラジル・リオのカーニバルはあまりに有名だが、ボリビアでも同じ時期カーニバルの祭りがあり、各地区の運営委員のような当番になると、1年間の現金収入以上をつぎ込むことになると聞く。
BY Yasushi HAMAMITSU