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水産開発事業の企画・運営・技術者派遣・研修業務/株式会社国際水産技術開発
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インドネシア国、バリ島の多種類種苗生産技術開発計画
JICA技術協力:1994年〜1999年

プロジェクト実施への経緯

我が国のインドネシアに対する水産技術協力は主として沿岸養殖を対象にして行われている。西部ジャワのセランにある中央水産研
究所(CRIFI)所属のボジョネガラ・ステーションにおいて実施された「浅海養殖プロジェクト」は延長とフォローアップを含めて1978年から1986年まで行われ、さらに1989年から1991年にはアフターケアが行われた。このプロジェクトでは魚類養殖と貝類養殖に関する技術協力が行われ、人材の育成に大きな成果を上げた。1988年から1993年にはバリ島にあるCRIFI所属のゴンドール研究所に対して「エビ養殖プロジェクト」が行われた。このプロジェクトではエビ種苗生産技術の改善に関する技術協力が行われ、人材の育成とゴンドール研究所の研究開発施設の充実に大きな成果をあげた。多種類種苗生産技術開発プロジェクト」は「エビ養殖プロジェクト」の成果を引き継ぎつつ多種類種苗生産技術を開発することを目的に要請が出され、19942月に協力の実施およびその方法に関して両国関係者の合意が成立し、19944月に協力が開始された。


プロジェクトの内容
多種類種苗生産技術開発プロジェクトの究極の目的は、複数種の種苗生産技術を開発し普及することによって有用魚種の種苗供給を安定させることである。プロジェクトの目標は、そのような目的を達成するために必要なゴンドール研究所の研究能力を強化することとされた。この目標を達成するために、(1)魚類およびエビの種苗生産技術開発あるいは改良(2)技術普及人員の能力強化(3)魚病防除体制向上という 3つの達成目標が立てられ、の4分野での技術協力が行われた。

1. 魚類種苗生産(サバヒー種苗生産の歩留まり向上、サラサハタ種苗生産技術の開発)
2. エビ種苗生産(親エビ池中養成技術の開発、エビ種苗生産におけるバイオコントロール技術の開発)
3. 魚病(魚病発生の実態調査、病原体を同定する技術の開発、魚病診断技術の開発、研究所内の魚病防除体制の確立)
4. 普及計画(バリ島における小規模サバヒーふ化場の実態調査、サラサハタ種苗生産の小規模ふ化場における実証試験、技術普及教材の作成、技術普及活動の活発化)
 
プロジェクトの成果

ゴンドール研究所の研究員の能力や試験研究施設・設備の質と量は大幅に向上した。その結果、ゴンドール研究所の研究開発能力が
強化されたことが本プロジェクトの主要かつ総合的な成果である。具体的に主な技術的成果を要約すると次のようになる。


1. 魚類種苗生産部門
・ サバヒー種苗生産における受精卵から種苗サイズまでの歩留まりの向上(10%程度から30%程度に向上)
・ サラサハタ種苗生産の成功
・ 種苗生産技術開発に伴う生物学的試験研究手法の移転
2. エビ種苗生産部門
・ バイオコントロール技術の開発
・ 親エビ池中養成に必要な条件の把握
3. 魚病部門
・ バリ島、ジャワ島、スンバワ島などの養殖関連機関における魚病発生状況の把握
・ 各種病原体の同定
・ 各種魚病の診断技術の確立
・ 寄生虫病の防除技術の確立
4. 普及計画部門
・ バリ島における小規模サバヒーふ化場の実態把握
・ パイロット小規模ふ化場におけるサラサハタ種苗生産の成功
・ 研修コース、セミナー、情報収集・技術交流のための調査旅行の実施
・ マニュアル、ニュースレター、研究論文集等の刊行
 
バリ島の印象

バリ島は山と湖と海に恵まれた豊かな土地です。地味豊かな火山性土壌に加えてたっぷりした雨量があり、地形の高低差を利用した見事な灌漑システムを構築して、おいしい米を生産しています。熱帯果物や野菜も豊富で飢えに苦しむということのない島です。バリ島の人々の多くは物質的にはきわめて貧しい暮らしをしています。しかし、食べ物や、花や、時間や、人間の労働をけちけちせずに思う存分浪費する彼らの宗教儀礼や通過儀礼を見ていると、彼らの生活は驚くべき豊穣さを持ってように見えます。

彼らはヒンズー教の信徒集団、社会規範を維持するための地縁血縁集団、生産活動を維持するための集団などいろいろな伝統的集
団に属しており、各集団から課せられる義務でがんじがらめになっています。しかし、彼らは自分が社会の中で孤立しているとか、自分のことを気にかけてくれる人間がいないといったことを感じることはないでしょう。自由を追求したあげくに個々人が孤立していってしまう物質と市場を中心にした先進国社会の在り方に、バリの社会は何等かのヒントを与えてくれるような気がします。


by Hiromu IKENOUE
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