ミヤンマーの養殖普及
ミャンマーでは、水産物、特に淡水魚が住民の貴重なタンパク源となっていますが、農家が自家消費や販売のために自ら魚を育てることはまだ十分に普及されていませんでした。JICAでは、2009年から2013年の4年間、住民のタンパク質摂取量と収入増による生計の向上を目的とした小規模養殖普及プロジェクトを実施しました。
ミャンマーで養殖シーズンの始まる6月、養殖に興味を持った農民に対して技術研修を行います。池の養殖の場合は、雨が降り出し池に水がたまったら種苗を放養して養殖が始まります。魚はコイやナマズの仲間で、現地でも好んで食べられている種類です。養殖が始まると、プロジェクトの専門家と水産局の職員が協力して定期的に各農家を巡回し、経営上の問題点を話し合い、必要な技術指導をします。順調に魚の生育が進み、乾期に入って水が干上がる2〜3月頃、養殖池の魚を収穫します。多くの場合、これらの魚は村の中で消費されます。
養殖池への種苗の放流 魚の計測
かつて日本でも盛んに行われていた田んぼでの養殖(稲田養殖)は、稲作の盛んなミャンマーでも有用な養殖方法として注目されています。米の生産期間に左右されるため、魚の育成期間は3ヶ月程度と短く、また基本的に無給餌のため収穫する魚のサイズは大きくはありません。しかし、稲田養殖は農家にとって米生産の傍ら低コストで副収入を得る機会を創出しています。
稲田への種苗の放養 一般的な養殖魚種のタピアン
プロジェクトは、これらの農家の中から養殖普及の担い手として篤農家(中核農家)を各地域で選定して研修を行い、周辺の農家へ種苗の供給や技術指導の担い手として育ててきました。中核農家も種苗を販売することで利益を得るわけですが、元々その地域で人望のある人物である場合が多く、本人も地域に対する無償の貢献を喜びと感じていることから、熱心な指導とそれを受けた農家の忠実な養殖活動が徐々に実を結んできました。
農民に対する研修風景 親魚の取り上げ
養殖シーズンが終わる3月頃、地域の農家が集まって一年の活動を振り返るワークショップを開催します。ここでは生産量や売上、問題点などを話し合いますが、一年間の収支を計算してみると、生産した魚の一部をお寺に寄付しているケースが見られました。敬虔な仏教徒の多いミャンマーでは、自らが直接現金を得ることよりも、得た現金を寄付をすることによって徳を積み、来世での幸せを願う人が多いことに驚かされました。これまで我々が想定していた現金収入の創出や食料増産といった、養殖普及に対する動機付けについて考えさせられることもしばしばでした。
養殖魚の取り上げ
以上
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